夕凪の街 桜の国
広島の原爆がテーマの映画です。
でもこのポスター(サウンドトラックの、しかも広告の写真ですが)の絵でわかるように、
原爆そのものの悲惨さを生々しく伝えたものではなく、
被爆者とその家族・取り巻く人たちのその後を、描いたものでした。
“夕凪の街”は、被爆から13年後が舞台。“桜の国”は2007年の現在。
戦争はよくない、原爆は恐ろしい。それはみんなが思っていることで当たり前のこと。
でも、ヒロシマもナガサキも、もう62年も前のことで、過去のこと。
夏の、8月以外、報道されることも意識することも少ない。
今はそうなってしまっています。私自身、そうです。
原爆というテーマを語るには私には何も知識がなく、広島や長崎出身でもない私がこの映画の感想を書くのは、
エセセンチメンタリズムやエセ正義感のような感じがして、ためらわれたのですが
やっぱり観た後も心にひっかかって消えないので、書いています。
戦争や原爆を体験された方々はいずれ、亡くなられてしまう。
経験してないことを、簡単に『わかる、わかる』と言うのは、はばかられるものです。
当事者でもないのに・・・と。
でも、いずれ時が経つと、体験者は誰もいなくなって、“かつて悲惨なことがあった”という認識だけになるのではないかと思うと、
その、対岸の火事、的な感覚が自分でも怖い。自分の国、いや世界全体の問題なのに。
原爆が投下されて戦争は終わったけど、被爆して生き残った方々の後遺症や、いつ発病するのか、いつ死ぬかわからない恐れや、遺伝はしないのかという不安や、
自分だけが生き残った罪悪感や、大切な人を失った心の傷は底なし沼のように、一見平和な現在、なんにも解決されてない。
この映画は原爆がテーマだから、興味ないから観ないなんて言わず、是非観てみてください。
平和な時代に生まれ、少なくとも今まで大きい病気や障害もなく、生きてこられた私でも、生きていれば、理不尽なことに『なぜ?』と思うことがいっぱいあります。
世の中は凶悪犯罪やいじめの報道が引きも切らず、その被害者のほうがなぜか傷を隠さねばならなかったり、自分を責めたり、追い込まれる。
映画の主人公・皆実が、好きな人に苦しみを話し、『生きとってくれてありがとうな』と言われるシーン。
みんな、つらさを言葉にすることで救われたり、でも言葉にするのもつら過ぎる苦しみを抱えて生きているのか、と思うと、胸がつまってしまいました。
麻生久美子の演技は素晴らしかったです。
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